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消化器外科 主な疾患(胃がん)

胃がん

臓器名
臓器の特徴 胃がん(胃癌)は、胃の内側の粘膜に発生する悪性腫瘍で、日本におけるがん罹患数、がん死亡数とも3位となっています。胃に発生したがんは胃壁に浸潤するため放置すると胃の壁を超えて腹腔内(お腹の中全体の空間)に広がることがあります。これを腹膜転移といいます。また、胃がん細胞はリンパ管や血管に入り込み、リンパ液や血液に混ざってリンパ節や肝臓、肺などの全身の臓器に転移することがあります。(図1)
臓器の働き 胃は、食べ物の貯蔵、機械的および化学的な消化、病原体の除去、ビタミンB12の吸収に関与する内因子の分泌など、消化過程で多岐にわたる重要な役割を担っています。
危険因子 胃がんのリスクを低減するためには、H.pylori(ピロリ菌)感染の予防や治療、食事や生活習慣の改善、禁煙、適切な体重の維持が重要です。胃がんの予後は、早期発見が鍵となるため、定期的な検診が推奨されます。
症状

胃がんは初期段階では症状が出にくいことがありますが、進行すると以下のような症状が現れることがあります。

・食欲不振
・体重減少
・吐き気・嘔吐
・胃の痛みや不快感
・黒色便(消化管出血による)

検査・診断

・内視鏡検査(胃カメラ):胃の内部を直接観察し、異常がないか確認します。必要に応じて、病変部から組織を採取し、病理検査を行います。
・超音波内視鏡検査:内視鏡の先端に超音波プローブが付いており、胃壁の深さや周囲のリンパ節を詳しく観察できます。
・X線検査:バリウムを飲んでからX線撮影を行い、胃の形状や異常を確認します。内視鏡検査よりも詳細に確認できませんが、スクリーニングに用いられることがあります。
・CT/MRI:がんの広がりや転移の有無を確認するために行われます。特に進行がんでは、リンパ節や他の臓器への転移を評価するのに役立ちます。
・病理診断:生検で採取した組織の病理検査により、胃がんの確定診断が行われます。この検査では、がんの種類(組織型)や悪性度が評価されます。

治療

胃がんの治療方法は、がんのステージ(進行度)や患者の全身状態によって異なります。

内視鏡治療:
早期胃がんで、がんが粘膜層にとどまっている場合、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離(ESD)が行われます。これにより、外科的手術を避けることができます。

外科手術:
がんが粘膜下層やそれ以上に達している場合、胃の部分切除や全摘が行われます。リンパ節の郭清(がんが広がっている可能性のあるリンパ節を除去すること)も同時に行われます。(図2)

・胃部分切除術:がんが胃の一部に限られている場合、その部分を切除します。
・胃全摘術:がんが広範囲にわたる場合、胃全体を切除することがあります。

胃切除後の再建方法は残った胃を十二指腸と吻合する、ビルロートⅠ法や胃と空腸(小腸)を吻合する、ビルロートⅡ法、ルーワイ法があります。胃全摘術では、通常ルーワイ法で再建します。(図3)

 

化学療法(抗がん剤治療):
手術後の補助療法や、手術が困難な場合の主治療として行われます。複数の薬剤を組み合わせて使用することが一般的です。進行がんでは、化学療法が主な治療法となることもあります。

放射線治療:
胃がんではあまり一般的ではありませんが、特定の状況で行われることがあります。

免疫療法:
近年では、免疫チェックポイント阻害剤などの免疫療法が、特に進行がんや転移がんに対して使用されることがあります。

緩和ケア:
症状緩和や生活の質を向上させるために、進行がんの患者には緩和ケアが提供されることがあります。

消化器外科の主な疾患画像1
消化器外科の主な疾患画像2
消化器外科の主な疾患画像3