食道がん 胃がん 大腸がん 肝臓がん 膵がん 鼠径ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニア 肛門疾患
CVポート(中心静脈ポート)外来を開設しました【2019年2月より】
2019年11月より、直腸がんに対するロボット支援手術を開始しました。
2020年10月より、女性乳腺外科医が着任しました。
当科の日常診療におけるトピックスや医療機関の先生方へのメッセージなど、ソフトでホットな話題を毎月提供しています。
当科は日本外科学会専門医制度修練施設・指定施設、日本消化器外科学会専門医制度指定修練施設・認定施設です。日本内視鏡外科学会技術認定医(2名)および日本肝胆膵外科学会高度技能指導医も在籍し、各学会専門医・指導医が患者さんの治療を行なうと同時に、外科を志す研修医・外科専門医・消化器外科専門医の育成も行なっています。また京都大学医学部外科学教室の関連施設でもあり、京都大学と活発な医療情報交換、スタッフの交流を保つことにより常に最高水準の医療を提供し、大津市の基幹病院として、滋賀県をリードできる最先端の外科チームをめざしています。
「外科手術」となると、患者さんにとっていちばん心配なことは、「痛い」「しんどい」「入院が長い」「キズが大きく残るのはイヤ」などでしょうか。当院ではこれらを克服しうる内視鏡(腹腔鏡・胸腔鏡)手術を積極的に取り入れ、2016~2017年は緊急手術を含めて食道切除術100%、胃全摘術100%、幽門側胃切除術95%、結腸切除術85%、直腸切断術及び切除術87%、胆嚢摘出術96%、虫垂切除術(いわゆる盲腸)100%、成人鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)手術77%、小児鼠径ヘルニア手術100%、肝部分切除術50%と圧倒的な内視鏡手術の割合となっており、年々その比率は高まっています。内視鏡手術には高度な技術が要求されますが、当院には日本内視鏡外科学会技術認定医が2名在籍し、安全性に十分配慮した正確な手術操作を心がけています。
合併症や事故が全国的に多数報告され、安全の確保のためには高度な技術が要求される内視鏡手術において、当科ではいかに研修医の修練施設とはいっても技術的に未熟な状態で執刀させるような診療体制はとっておりません。
「高度鏡視下手術トレーニングセンター」は、”若手医師が実臨床で術者足りうる鏡視下手術の基本技術を身につけるためのトレーニング施設”です。当科では2019年1月から、日本内視鏡外科学会・技術認定医の資格が未取得の場合、当センター所定の技術テストにおいて認定された外科医のみが執刀できるシステムとしました。
【2020年1月21日現在】
・日本内視鏡外科学会・技術認定医:光吉 明、平井 健次郎
・高度鏡視下手術トレーニングセンター合格医:青山 太郎、藤田 覇留久、大江 秀典、岡部 あさみ、植村 泰佑、戸田孝祐
「がん」は急速に大きくなります。診断がついても手術を待っている間にもどんどん成長しますので、診断がついたときと手術予定日では病気の状態が大きく変わっていることがあります。当科では特に「がん」の患者さんは最優先に手術日程を組みますので、検査所見がそろっていれば1~3週間以内に手術可能です。
昔とちがい、転移のあるがんでも化学療法(いわゆる抗がん剤治療)をうまく行えば治すことが出来る時代になりました。当科では消化器がん、乳がんに対するガイドラインに基づいた化学療法を積極的に行っています。何十、何百とある選択肢の中から、患者さんのライフスタイル、御希望にあわせた、出来るだけ副作用の少ない治療法を提案します。他院で手術を受けられた患者さん、他院で化学療法を行っている患者さんも受け入れ可能です。
当科ではあらゆる消化器疾患に対する外科治療を安全に提供することをモットーに消化器内科と連携して日々診療にあたっています。穿孔性腹膜炎、急性虫垂炎などの緊急消化器疾患には24時間オンコール体制をとり、地域の緊急医療を支えています。がん治療には特に力をいれており、食道がん、胃がん、大腸がん、肝がん、膵がんの各領域で専門医による最先端のがん治療体制を整えています。体の負担の軽く回復の早い腹腔鏡手術を積極的に取り入れ、消化管のがんに対する腹腔鏡手術の施行率は県下トップクラスで豊富な経験を有しています2016年には手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」による胃がん手術で県下唯一の先進医療認可を取得しました。また2019年11月からはロボット支援下の直腸癌手術も開始いたしました。
化学療法・放射線療法も含めて最先端の治療手段がそろっています。
手術では完全内視鏡下手術を導入していますので、多くの場合、頚部を切開せず、胸部・腹部の小さなきずだけで、がんを精密に取り除くことができます。
回復が早い、痛みが少ない、合併症が少ないという利点のある腹腔鏡手術や最新のロボット支援手術により、安全かつ精密にがんを切除します。 転移を伴う進行がんには、治癒率の向上を目指して、手術の前後に抗がん剤治療を併用するなど個々の病状に応じた治療を提案しています。
腹腔鏡手術を用いた精密な手術を行うことで、がんをきれいに切除しつつ、細かい自律神経を残し、性機能や排便・排尿機能を温存しています。下部直腸がんに対しては、放射線化学療法を手術前に併用することにより、確実な局所治療を行い良好な成績を収めています。また括約筋間切除術によりを導入しており、肛門温存が可能となっています。2019年11月からはロボット支援下の直腸癌手術を開始し、さらに精緻な剥離操作、リンパ節の廓清操作が可能となりました。
最新の3次元画像解析システム「VINCENT」を用いた詳細な手術シミュレーションや、VIOシステムやCUSAなどの手術機器の駆使により原発性肝がん、転移性肝がんの高難度手術を安全に施行しています。手術困難例でもこうした工夫に加えて、血管合併切除再建などの先進手技を導入することにより切除できる場合があります。
進行した状態で発見されることが多いがんですが、なるべく長期の生存が目指せるように、がんが浸潤した血管を合併切除するなどして積極的に切除を行っています。 手術後は早期に回復して抗がん治療が行えるように、術後早期経腸栄養など最新の周術期管理を取り入れています。
鼠径ヘルニアや腹壁瘢痕ヘルニアに対して「腹腔鏡下ヘルニア修復術」を積極的に行っており、年間100例前後の手術実績を有しています。
全身麻酔下に腹腔鏡でおなかを内部から観察して腹壁の弱くなった欠損部にメッシュという人工の膜をあてて補強する手術ですが、従来法よりも小さい創で痛みが少ないことから患者さんの満足度が高い術式です。
肛門疾患には様々な種類がありますが、実際には悪性腫瘍や泌尿器系もしくは婦人科系の疾患(病気)が隠れていることもあり総合的に診断する必要があります。また、排便機能に関連する部分であり将来を考えて治療をする必要もあります。できる限りプライバシーに配慮し診察させていただきますのでお気軽にご相談ください。
☆当院の特徴☆
・痛みの有無に関わらず排便時に出血が続いている→痔核、切れ痔の可能性があります。
・排便後に肛門から何かが出て毎回押し込んで戻す必要がある→痔核、直腸脱の可能性があります。
・切れ痔を繰り返して肛門が狭くなり便がでにくく感じる→肛門狭窄の可能性があります。
・肛門周囲に痛みがあり、腫れているもしくは膿がでている→肛門周囲膿瘍、痔ろうの可能性があります。
・便が漏れる→直腸脱の可能性があります。
*実際には診察、検査を行ってみないと正確な診断は出来ませんので上記は参考程度にお考えください。
大きく分けて3種類に分かれます。
・保存的治療
・内痔核に対する切らない治療(ALTA療法)
・手術療法→疾患に応じた手術を行います。麻酔は局所麻酔から全身麻酔まで全身状態や治療法に合わせて柔軟に対応いたします。
脱出する内痔核(いわゆるいぼ痔)に対しては、手術による切除が標準治療でしたが、当院では、「切らずに治す」ジオン(ALTA)注射療法を取り入れています。従来の手術法に比べ痛みや出血が少なく、長期入院を必要としないなどの多くのメリットがあります。
*痔の種類によっては適応とならないこともあります。
*妊娠している可能性がある、妊娠中、授乳中の婦人はこの治療は受けられません。
高齢女性に多いのが、加齢などによる骨盤底筋の低下で直腸が肛門から出てきてしまう「直腸脱」という病気です。他の疾患を併発することもあるので、慎重な診断と治療が重要になります。当院では直腸脱だけでなく、泌尿器科と合同で骨盤内臓脱(膀胱脱や子宮脱)の治療にも積極的に取り組んでおり、痛みや傷が小さい腹腔鏡手術で行っています。
肛門外来 | 毎週木曜日 午前・午後 |
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中心静脈ポート(以降CVポートと呼びます)は、多くの場合は右前胸部の皮下に薬剤を注入するポートを留置し、カテーテルは心臓の手前の静脈(上大静脈)に留置する方法です。
CVポートは①右鎖骨下静脈(前胸部)②内頸静脈(首)③上腕静脈(腕)のいずれかの血管から挿入されるのですが、当院では多くの他施設と同様に①右鎖骨下静脈を第一選択としています。
(日本統合医療推奨協会HPより)
手術室にて局所麻酔で処置を行います。所要時間は1時間から2時間程度で、1泊程度入院されることが多いですが、日帰りも可能です。CVポートは挿入当日から使用可能です。
CVポートは鎖骨下静脈をエコーガイドで穿刺するのですが、注意点があります。
以上のリスクはゼロにすることはできませんが、当院では外科が専門に行い、かつ習熟した担当者が指揮監督することでリスクを最小限にするよう努めています。
CVポートは月単位、年単位で使用することがあり、それに伴う注意点もあります。
カテーテルの断裂については、いままで鎖骨と肋骨の間をカテーテルが通過することから断裂すると言われていましたが、それだけでは説明がつかない断裂も報告されています。そのことから断裂しにくい製品を使用することが最も重要と考え、当院は力一杯引っ張っても断裂しない材質が使用されている製品を採用しています。カテーテルの閉塞については、フィブリンがカテーテルを取り巻くように付着することで起きるとされています。この場合は交換をするしか方法がありません。細菌感染についても基本的には抜去を行うしかないとされています。
特に問題がなければCVポートには定期交換は不要で、5年以上使用されている患者さんもおられます。
CVポートはメリットが大きい手技ではありますが、上記のような注意するべき点があります。当院では、CVポート挿入と管理については外科に一元化されています。挿入のご相談、挿入後のトラブルのご相談についてはお気軽に外科CVポート外来を受診いただければ幸いです。
寝たきり状態またはそれに近い患者様の場合、事前に地域医療連携室を通してご相談いただければ入院での造設も検討いたします。
CVポート(中心静脈ポート)外来 | 原則毎週月曜日 午前・午後(左記以外も受付可能ですのでご相談ください) | 担当 | 大江秀典医師 |
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女性外科外来では、乳腺疾患のほか、痔や肛門病変、鼡径ヘルニアなど、男性医師に相談しにくい疾患や、恥ずかしさから女性にとって受診のハードルが高い疾患について、女性医師が対応いたします。
小児鼡径ヘルニアにも対応していますので、ご自身が受診される際にご相談ください。
女性外科外来 | 毎週水曜日 午前・午後 | 担当 | 岡部あさみ医師 |
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(単位:例)
手術数 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
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全手術数 | 617 | 602 | 588 |
鏡視下手術(EMR・ESDは除く) | 373 | 390 | 398 |
全麻手術数 | 519 | 504 | 506 |
緊急手術数 | 116 | 123 | 108 |
(単位:例)
術式別手術数(そのうち鏡視下数) | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
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食道切除術 | - | 8(8) | 5(5) | 2(2) |
幽門側胃切除術 | (幽門保存含む) | 19(18) | 19(18) | 18(18) |
胃全摘術 | (噴門含む) | 15(15) | 5(4) | 14(12) |
胃部分切除術 | - | 2(2) | 2(2) | 0(0) |
結腸切除術 | - | 68(58) | 62(48) | 65(53) |
直腸切断術 | - | 26(23) | 25(25) | 10(10) |
直腸切除術 | (骨盤内蔵全摘含む) | 4(3) | 3(3) | 2(2) |
乳がん手術 | - | 53 | 49 | 42 |
胆のう摘出術 | (総胆管切石術含む) | 118(113) | 89(85) | 80(78) |
虫垂切除術 | - | 69(69) | 46(46) | 60(60) |
成人ヘルニア手術 | (鼡径・大腿・腹壁ヘルニア) | 116(89) | 65(62) | 62(57) |
小児ヘルニア手術 | - | 3(3) | 3(3) | 3(3) |
良性肛門疾患手術 | (痔核・脱肛など) | 40 | 25 | 24 |
術式別手術数(そのうち鏡視下数) | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
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葉切除以上 | 2 | 3 | 7 |
区域切除・亜区域切除・外側区域切除 | 10 | 3 | 2 |
部分切除(肝床部切除含む) | 12(6) | 4(2) | 11(3) |
総数 | 24(6) | 10(2) | 20(3) |
術式別手術数(そのうち鏡視下数) | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
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膵頭十二指腸切除術 | 5 | 11 | 4 |
膵体尾部切除術 | 6(1) | 5(0) | 2(0) |
膵全摘術 | 1 | 1 | 1 |
膵中央切除術 | 0 | 0 | 0 |
膵部分切除術 | 0 | 0 | 0 |
上記のうち血管再建を伴うもの | 1 | 2 | 0 |
総数 | 12(1) | 17(0) | 7(7) |
工事中
胃がんに対する腹腔鏡手術は、術後の痛みが少なく、手術合併症も少ないという利点があり、胃切除術では全国平均で約40%まで普及していますが、進行がんへの適応は進んでいません。長期予後に関するデータが乏しいことが理由のひとつですが、手術手技が複雑で難度が高いことも大きな理由です。進行胃がんに対する手術では切除範囲も大きくなり、がんを正確に切除するために、より複雑な操作が必要になります。こうした高度進行胃がんに対する腹腔鏡手術の手技の安全性を検証するため、当院前任の岡部(現 新東京病院 外科)は前任の京都大学で5年間にわたり進行がんに対する臨床試験を行い、安全性を証明するとともに進行がんに対する手術技術を確立しました。患者さんの満足度も非常に高く、手術合併症の減少や体力低下の軽減などの効果も期待できるため、患者さんと手術方法を十分相談したうえで可能な限り腹腔鏡手術を行っています。
従来の開腹手術では約30%に合併症が起きていましたが、腹腔鏡手術の導入により合併症率は約20%に低下しました。近年、腹腔鏡手術に新しい技術である手術支援ロボットを用いることによって、より精密で体にやさしい手術が可能であることがわかってきたため、当院では2015年より「ロボット支援胃切除術」も行っています。本法は胃がんの手術方法では最先端の技術を用いた方法で全国でも限られた施設でしか導入されていません。当院では、十分な経験のもとにより安全な手術を行います。現在は健康保険がきかないため自費診療となりますので、詳細については担当医にお問い合わせください。
食道がんに対する食道切除術は、外科手術の中では最大の侵襲を伴う手術です。本邦の報告では概ね50%に何らかの合併症が生じ、最新の全国統計でも術後在院死率は依然3%を上回っています。術後の主な合併症は、栄養不良による縫合不全と肺炎で、肺炎の原因は術中に肺の虚脱や圧排を行うことによるダメージや、気管周囲と頚部リンパ節の郭清操作により嚥下機能が悪化することによる誤嚥が主なものとされています。 胃がんや大腸がんに対する腹腔鏡手術と同様に、食道がんに対しても胸腔鏡手術を導入することにより、侵襲を減らして合併症を減らそうという試みはすでに1990年代から行われてきました。しかし、胸腔鏡手術により、体表の手術創は小さくなっても、術中に肺虚脱や圧排を要することは変わらず、頸部郭清による嚥下機能の低下も避けられません。 私たちは、胸腔鏡下手術の際に、より術中無気肺を少なくして肺にダメージの少ない手術を行うため、患者さんの体位を腹這い(腹臥位)として、さらに腹腔鏡手術と同様に二酸化炭素を送気して「人工気胸」状態とすることにより肺を虚脱させて手術する方式をとりいれました。本法により手術中に片肺換気にする必要はなくなり、肺を直接物理的に圧排する必要もなく術野が得られるようになり、術後の肺炎発生率が大幅に減少しました。海外では最近本法を用いた胸腔鏡手術と従来型の開胸手術とのランダム化比較試験が行われ、術後の肺炎発症が有意に減少したことが示され、本法の有用性が明らかになっています。 また、頚部と胸部の境界部(頚胸境界部)のリンパ節は食道がんでは非常に転移率が高いため切除が必要で、従来は頚部から切除していましたが、胸腔鏡での手術経験を積むことによって、食道沿いの頚部リンパ節は胸腔側からほぼ切除が可能なことがわかってきました。現在の胸腔鏡食道がん手術は、多くの施設で頚部を切開してリンパ節切除と食道胃管吻合を行っていますが、頚部切開とリンパ節切除は少なからず術後の嚥下機能の低下に関わっていると考えられます。私たちは胸腔鏡下に食道と胃管を吻合する技術を開発して、リンパ節郭清範囲は従来のまま、頚部の切開を省略することに成功しました。胸腔内の食道胃管吻合は胃管のより血流の良い箇所で吻合ができるため従来から縫合不全率が低いと言われており、縫合不全は約1%と極めて低率になりました。
私たちの術式は胃管の作成と腹部リンパ節郭清も、胃がん手術の技術を応用して、完全腹腔鏡下に行うため、術後の創部はごく小さいもののみになります。こうした工夫により、術後の肺炎と縫合不全などの合併症発生率が低くなり、従来手術が難しかった高齢の方や栄養不良の患者さんでも手術の安全性が高まり、治療選択肢が広がりました。食道がんの治療についてはぜひご相談ください。
当科では早期大腸がんはもちろん、進行大腸がんに対しても腹腔鏡手術を基本とした手術治療と、放射線や化学療法を組み合わせた集学的治療を行っています。また、腹腔鏡による大腸がんの治療効果が開腹手術に劣らないことは臨床試験で証明されています。年間約90例の腹腔鏡下大腸がん手術(全体の8割)を行っており、最近では高齢の患者さん、腹部手術術後の患者さんにも安全に行っています。また2019年11月からは直腸癌に対するロボット支援下手術を開始しました。腹腔鏡手術には次のようなメリットがあります。
図1
腹腔鏡では、どこのがんであれ同じ程度の創の大きさです。
開腹ではがんの部位により多少の創の上下はありますがこのくらいの大切開が必要です。
図2:直腸がん手術の手術画像
図3
一昔前までは肝臓がんや膵臓がんなどの肝胆膵領域の悪性腫瘍は、その悪性度の高さ、あるいは非常に複雑な解剖構造ゆえに手術の適応となる症例は少なかったのですが、最近は診断技術の進歩とともに早期診断および早期治療できる症例が増えてきています。また進行した状態であっても、適応があれば当院では積極的に手術治療を行っています。 原発性肝がんや転移性肝がんに対し最も根治的な治療法は手術ですが、肝臓切除手術では大量の出血を伴う危険性があり、どこの病院でも安全に行えるというものではありません。「出来るだけ多くの量を残したい重要な臓器」としての肝臓に対して、いかに工夫してがんの取り残しがないように、なおかつ出血を抑えて安全に切除できるかがポイントになります。安全な肝切除術を行うにはまずは外科技術の向上が重要ですが、同時に徹底的な術前の肝機能評価およびMDCT、MRI、PETなど各種検査機器、画像診断装置による手術デザインの検討が必要です。そして手術に際しては種々の高度手術機器の整備が必要ですが、幸い当院には必要十分な機器類がいつでも使用できるよう整備されています。 画像診断装置による精査は、肝胆膵領域の腫瘍に対して安全な手術を計画するうえでは大変重要ですが、当院では3次元画像解析システム「VINCENT」を用い、腫瘍の局在、血管や脈管との位置関係、また切除する範囲の容量の評価などを詳細に検討したうえで手術を行うようにしています。 特に複雑な症例に対しては、64例マルチスライスCT(MDCT)により得られた画像データをドイツ・ブレーメンの医用画像研究所である「MeVis」と協力して肝動脈・門脈・肝静脈の三次元画像として再構成し、脈管の支配領域を計算・グラフィック化することにより、肝切除を行う際にどのような切除法で臨めば根治性と機能温存を両立できるかを綿密に検討することも可能です。 (図-1A~D)
原発性肝がんに対しては術中エコーによる系統的肝切除を追求し、CUSA(超音波吸引装置)、LCS(ハーモニックスカルペル・ソノサージなど超音波凝固切開装置)、VIOシステム(ソフト凝固およびバイクランプによる血管シーリング)などの高度手術機器を駆使した安全な肝実質切離と止血が行えるように工夫しています。(図-2,3)
膵臓癌に対する手術として膵頭十二指腸切除術が行われますが、合併症として膵液漏をおこした場合には時として致命的な経過をたどります。その再建方法として当科では従来の方法に改良を加えた術式を採用しています(図-4~6)。従来の二列法(膵実質空腸漿膜筋層縫合)を基本とし、主膵管内にステントチューブを完全外瘻として留置、さらに膵管空腸粘膜縫合も加える術式であり、膵液漏の予防が期待できます。当科では2013年以降、特に主膵管の細い症例(一般的に膵液漏をおこしやすい)に対してこの再建術式をおこなっていますが、臨床上問題とされているGrade BおよびCの膵液漏発生率が極めて低いという良好な結果を得ています。
図-4~6はすべてAkira Mitsuyoshi, et al: Proposal for a safe and functional pancreaticojejunostomy technique from a histopathological perspective World Journal of Surgery. 42(12), 4090-4096 2018 からの引用
胆膵領域の複雑な腫瘍切除をおこなうには外科手術手技の向上や手術機器の整備だけではなく、病院全体としてのサポート体制が必要です。当院には麻酔科との密な連携・協力、ICUでの周術期管理体制があり、このような複雑ながん手術を行うにあたって十分な環境が整っています。肝腫瘍や膵腫瘍を認める場合、ご遠慮なく受診していただければと思います。
疾患によっては肝胆膵領域にも内視鏡手術を積極的に取り入れ、安全性と根治性を両立した「キズの小さな」「患者さんに優しい」治療法を工夫しています。
1) | Akira Mitsuyoshi, et al: Surgical approach for maintaining nonischemic condition of the liver in acute hepatic vein obstruction. J Surg Res 58, 373-381, 1995. |
2) | Akira Mitsuyoshi, et al: A new experimental model of specific liver hypoxia using membrane oxygenator. Res Exp Med 194, 367-373, 1994. |
3) | 光吉 明、他:動脈血門脈逆流による肝部下大静脈病変に対する手術手技の提案 外科 63:987-993, 2001.. |
4) | 光吉 明、他:低出力CUSA(超音波吸引装置)による消化器手術剥離操作の工夫 - 肝授動、脈管分離とリンパ腺郭清への応用 - 手術 65:645-1648, 2011. |
5) | 講演会ノート「肝腫瘍に対する外科的治療の実際」 大津市医師会誌 第36巻11号 2013 光吉 明 |
6) | セミナーノート「時代が求める外科治療とは」 大津市医師会誌 第36巻7号 2013 光吉 明 |
7) | Akira Mitsuyoshi, et al: The Cavitron ultrasonic surgical aspirator with a low amplitude is a useful dissection device for surgical procedures: application to vascular datachment and lymph node dissection. Updates in Surgery 22 Mar 2016 |
8) | Akira Mitsuyoshi, et al: Proposal for a safe and functional pancreaticojejunostomy technique from a histopathological perspective World Journal of Surgery. 42(12), 4090-4096 2018 |
社会の高齢化に伴い手術が必要な患者さんの中で、非常に高齢の方や心臓や肺、腎臓などの基礎疾患をお持ちの方が増えています。このような患者さんの手術を安全に行うには心臓内科、腎臓内科、麻酔科や検査技師、臨床工学士との密接な連携と、よく整備された質の高い集中治療室を持つことが必須です。当院では心筋梗塞や心不全などの心臓疾患の既往をお持ちの患者さんや維持透析中の患者さんの手術症例が多く、このような患者さんの手術を安全に行うための万全の体制を整えております。
最近一つの疾患単位として認識されてきた病態で、心臓血管手術後や腎透析後に腹部血管の攣縮による血行不全により腸管が多発性に壊死に陥り、致命的な経過をとる非閉塞性腸間膜梗塞症(NOMI)という恐ろしい疾患があります。(図-1)
身体機能の低下した高齢者に発症しやすい致命率の極めて高い疾患で(40~70%の死亡率)、救命のためには早期診断と治療が重要です。当疾患に対してはかなり以前より注目し、われわれが提唱するMDCT(マルチスライスCT)とプロスタグランディンE1による早期診断・治療法(図-2,3,4)は日経メディカルにもとりあげられ(2006年6月号:トレンドビュー)、最近では米国で診断基準の一つとして認知されるようになってきました。この方法により国内国外を問わず多くの患者さんを救命することが可能になってきています。
1) | 光吉 明、他:MDCTによる非閉塞性腸間膜梗塞症(NOMI)の早期診断 臨床外科 62:283-288, 2007. |
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2) | 光吉 明、他:心臓血管手術後の患者に発生した非閉塞性腸間膜梗塞症(NOMI)の治療経験 消化器外科 22:1165-1168, 1999. |
3) | 光吉 明、他:非閉塞性腸間膜梗塞症を疑った症例に対するProstaglandin E1持続静脈内投与の試み 臨床外科 60:229-233, 2005. |
4) | Akira Mitsuyoshi, et al: Survival in non-occlusive mesenteric ischemia (NOMI): early diagnosis by MDCT and early treatment with continuous intravenous high-dose PGE1. Annals of Surgery 246, 229-235, 2007. |
5) | 光吉 明、他:上腸間膜動脈血栓症に非閉塞性腸間膜梗塞症を合併した症例 消化器外科342:1395-1399, 2011. |
6) | 石川雅健、他:非閉塞性腸間膜虚血症 救急医学35:1794-1796, 2011 |
7) | Woodhams R, et al: Usefulness of multidetector-row CT (MDCT) for the diagnosis of non-occlusive mesenteric ischemia (NOMI): assessment of morphology and diameter of the superior mesenteric artery (SMA) on multi-planar reconstructed (MPR) images. Eur J Radiol 76, 96-10, 2010 |
8) | Kamimura K, et al: Survival of three nonocclusive mesenteric ischemia patients following early diagnosis by multidetector row computed tomography and prostaglandin E1 treatment. Intern Med 47, 2001-2006, 2008 |
9) | 非閉塞性腸管虚血症(NOMI)の診断と治療 胃と腸 第48巻 12号 1762-1768 2013 医学書院 光吉 明、他 |
10) | Akira Mitsuyoshi, et al: Pathogenic mechanisms of intestinal pneumatosis and portal venous gas: should patients with these conditions be operated immediately? Surgical Case Reports,1:104, 2015 |
11) | 光吉 明、他:腸管気腫症はいかにして発生するのか - 組織所見に基づく分類と手術適応に関する考察 - 外科 78:69-74, 2016. |
12) | Akira Mitsuyoshi, et al: What We Can Learn from Cases of Synchronous Acute Mesenteric Obstruction and Nonocclusive Mesenteric Ischemia: How to Reduce the Acute Mesenteric Ischemia-Related Mortality Rate Annals of Vascular Surgery 133.e11-133e17 32 April 2016 |
当院では腹壁のヘルニア、特に鼠径ヘルニアや腹壁瘢痕ヘルニアに対して積極的に腹腔鏡下手術(全身麻酔)を行って、小さい創、術後疼痛の軽減に心掛けております。また、鼠径ヘルニアに対しては局所麻酔や脊椎麻酔(硬膜外麻酔や腰椎麻酔)による日帰り手術も患者さんの御希望により行っております。
全ての患者さんが腹腔鏡による治療が良いというわけではありません。
患者さん一人一人に対して最も適切な治療を選択するよう努めております。
腹腔内の臓器(腸管や肝臓、膵臓、脾臓など)は腹膜という薄い膜で覆われ、筋膜に包まれた頑丈な筋肉、そして皮下脂肪や皮膚で覆われています【図1】。
腹壁のヘルニアとはその頑丈な筋肉の膜が筋肉と共に破綻し、弱くなったところに、伸びた腹膜(ヘルニア嚢)が膨隆(ふくれる)することです【図2】。この弱くなったところから腸管が飛び出すと、いわゆる「脱腸」ということになります。
●どのようなタイプがあるの?
腹壁のヘルニアで最も多い疾患は鼠径ヘルニア(内鼠径ヘルニア、外鼠径ヘルニアがあります)、その次に多いのが腹部手術の腹部創部に生じる腹壁瘢痕ヘルニアです。他に大腿ヘルニア、高齢の女性に多い閉鎖孔ヘルニアなどがあります【図3】
●治療は?
治療の原理はとても単純です。治療は、欠損した筋肉の膜をメッシュで補強します。【図4】
ただし、若年者(30歳以下くらいでしょうか?)の鼠径ヘルニアは出口が狭いことが多く、ヘルニア嚢を切除し、周囲の筋肉の膜を縫合するだけで治癒することが多いので、極力人工物は使用致しません。メッシュが男性不妊症の原因になる可能性があるからです。これに対してある程度の年齢の鼠径ヘルニアでは、これだけでは再発することが多く、メッシュという人工の膜をあてて治します。
腹腔鏡下小児鼡径ヘルニア手術(LPEC)のメリットとしては、
・きずが小さいので目立たず、術後の痛みが少ない。
・反対側のヘルニアの有無が確認でき、発見した場合は同時に手術することが可能。
等が挙げられます。
■ すべての小児鼡径ヘルニアが、腹腔鏡下手術の適応ではありません。診察の結果で判断します。
■ 腹腔鏡下での手術が困難と判断した場合には、途中から通常の手術(開腹手術)に変更する場合があります。
今後、より具体的な当院ヘルニア治療についての情報を提供していきます。
★★ 御期待下さい! ★★
妊娠出産後にお腹がぽこっと膨らんでしまう病態、「腹直筋離開」は日本では認知度は低く、疾患概念も定着していません。治療法も定まったものはなく、この疾患に悩んでいる潜在的な患者さんは国内に相当数おられるようです。 妊娠によって腹直筋の筋膜は過伸展しているものの欠損ではなく、腹壁瘢痕ヘルニアや白線ヘルニアとは病態は異なります。これにより美容的な苦痛だけではなく腹部不快感が続いたり、腰痛や尿もれの原因となる可能性も指摘されています。産後トレーニングなど保存的な治療法で改善しない場合には、当科では患者さんと十分な相談のうえ腹腔鏡下での修復術をおこなっています(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/77/3/77_657/_pdf/-char/ja)。
2017年のデータによると、特に40歳代の女性では、乳がん、子宮がん、卵巣がんの死亡が多く、乳がんは女性における死亡数が多い部位の第5位となっています。
2014年の罹患数(新たに「がん」と診断された数:全国合計値)では、乳がんが最も多く、女性の第1位となっていて、これは11人に1人の割合で乳がんになるリスクがあることを示しています。 ただ、2006年~2008年診断例において「乳がん」と診断されてから5年後に生存している人の割合(5年相対生存率:100%に近いほど、治療で生命を救えるがん)は91.1%と非常に高く、早期発見・早期治療が大切なことがわかります。(国立がん研究センター「最新がん統計」より)
早期発見・早期治療のためにも、定期的に「乳がん検診」を受診しましょう。
●どんな検査をするの?
マンモグラフィ:早期乳がんの発見に役立ちます
マンモグラフィは、触診では診断が難しい小さなしこりや、しこりになる前の石灰化した微細な乳がんの発見など、乳がんの早期発見に有効です。
超音波(エコー)検査:若い人の診断に適しています
マンモグラフィに比べて小さなしこりや石灰化した微細な乳がんの診断は困難ですが、しこりの内部構造の鑑別がしやすいので、乳腺が密な若い人の診断に適しています。
●検査や検診はどこで受けられるの?
乳がんは毎年増加傾向にあり、当科でも毎年30件を超える乳がん手術を行っています。
当院乳腺外科には下記の特長があります。
月・火(午前)・水・金 | 橘 | 火(午後)・木(午前・午後) | 交代制 |
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乳がんの治療といえば、かつては「手術」でしたが、現在では、がんの進行度や性質、それに加えて患者さんの希望をふまえて治療方針を決定します。実際には、下に示す治療を組み合わせて行うため、何通りもの方法があります。
局所療法:手術、放射線療法
全身療法(薬物療法):化学(抗がん剤)療法、ホルモン療法、分子標的療法
患者さんごとに状況が異なりますので、個別に方針を設定します。
CTやMRI、RI検査により、しこりの大きさ、脇の下のリンパ節転移の有無、他の臓器への転移の有無によって進行の程度を表わし、病期(ステージ)を分類します
針生検や、手術で切除したがんの組織を、顕微鏡でくわしく調べ(病理検査)、治療方法の選択に必要な情報を得ます。
進行度や、性質の結果から、再発のリスクを予想し、患者さんの全身状態(もともとある病気)や、月経のあるなしを考慮して治療方針を決定します。
日本乳癌学会の「乳癌診療ガイドライン」、St. Gallenコンセンサス会議、NCCNガイドラインを参考に、乳がん診療チームで一人一人の乳がんの性質を詳細に検討し、患者さんに応じた治療を決定します。
1.乳房温存手術
病期Ⅱ期以下の乳がんに対する標準的な局所療法です。
乳房温存療法ガイドライン(2005年)による温存手術の適応条件
1. | しこりの大きさ:3cm以下、または整容性が保たれる(良い形で乳房が残る)のであれば4cmまで適応 |
2. | 年齢:制限なし |
3. | リンパ節転移:有無や数に関係なし |
4. | 乳頭からがんまでの距離:関係なし |
5. | しこり(がん)が複数ある場合 しこり(がん)が近くに存在し、整容性と安全性が保たれるのであれば適応 |
手術の約60%が、乳房温存手術です。
がんとその周囲の乳腺を切除して、乳房をできるだけ良い形で残すことを目指します。乳房に傷を残さないようにするため、最近では、可能な限り乳輪に沿った小切開(傍乳輪切開)で手術を行うようにしています。(腫瘍の部位や大きさによっては、その他の切開方法を行うこともあります。)
手術中、切除した乳腺のへりにがん細胞がないかどうか、顕微鏡で調べています(術中迅速病理診断)。約1時間で結果が出ます。陽性であれば追加切除を行います。状況によっては温存できず、乳房切除に変更せざるを得ない場合があります。
大きながんを、抗がん剤やホルモン剤で小さくしてから、乳房温存手術を行うことがあります(術前化学療法)。抗がん剤投与は基本的に外来で行います。ベッドやリクライニングシート(テレビ有り)を完備した化学療法部で、がん化学療法看護認定看護師のもと、行うことが可能です。
乳房温存術後は原則として、術後、残した乳房に放射線療法を行います。(高齢の方や、膠原病のある方にはお勧めしないことがあります。)
通常、通院で25日間程度かけて放射線の照射を行います。(毎日少しずつ照射します。1回の治療に要する時間は、数分です。)
2.乳房切除術
乳房温存術が適応でない場合や、放射線療法を受けたくないというときには、胸筋温存乳房切除術や、乳輪乳頭温存全乳腺切除術を行います。
3.センチネルリンパ節生検
術前診断で、腋窩(脇の下の)リンパ節に明らかに転移が疑われる所見がない場合に施行します。通常は乳房の手術と同時に行います。
「センチネルリンパ節」とは、がんが一番最初に転移するリンパ節のことで、このリンパ節に転移がなければ、それ以外のリンパ節への転移がないという考えにより行う検査です。
当院では、現在色素法を用いてセンチネルリンパ節生検を行っています。
手術開始直前に、乳輪下に青い色素を注入し、脇の下を小さく切開して、青く染まったリンパ節を摘出して顕微鏡の検査(術中迅速病理診断)を行います。転移がなければ、腋窩リンパ節郭清(次項参照)を省略し、転移陽性であれば、腋窩リンパ節郭清を行います。 生検の感度上昇や時間短縮のため、近日、蛍光検出法の機械(PDE)を導入する予定となっております。
4.腋窩リンパ節郭清
「郭清」とは、決められた範囲のリンパ節をすべて取り除くことを言います。
術前診断で、転移が疑われる腋窩リンパ節が認められていたり、センチネルリンパ節生検で転移陽性であった場合に行います。 腕を動かす筋肉や、それらの血管や神経は切除しませんので、術後に腕が動かなくなることはありません。
摘出したリンパ節のうち、転移しているリンパ節の個数を調べて、治療方針の決定に役立てます。
腋窩リンパ節郭清に伴い、上腕のリンパ浮腫を生じることもありますが、がん治療専門看護師によるセルフケアの指導や、専門の理学療法士によるリハビリテーション・リンパマッサージを受けることができます。
5.乳房再建
手術により失われた乳房のふくらみや変形を、良い形に整える手術のことで、形成外科で行います。
乳がんの手術と同時に再建する方法と、初回手術後、一定期間の治療が終了した後に行う二期的再建手術があります。
当院には2013年度から形成外科が新しく開設され、乳房再建手術も可能となりました。
希望される方におきましては、随時ご相談の上、手術を計画いたします。
6.高齢者にやさしい手術
日本乳癌学会ガイドラインでは、高齢者でも手術を推奨しており、当科でも積極的に手術を行っております。(最高齢95歳)
当科ではかねてより、QOL(生活の質)を重視した治療方針をとっており、高齢の方に対する手術方法を分析検討しました。(第21回日本乳癌学会)
その結果、80歳以上の方の手術では、センチネルリンパ節生検も含めて、腋窩操作を行わない手術術式を基本としております。
薬物療法の種類としては大きく分けて、抗がん剤、ホルモン剤、分子標的治療薬の3種類があります。
これらの薬をどのような時期に(術前・術後)、どのように(組み合わせ)使用するかは乳がんの性質と再発のリスクを考慮して決定しています。
不幸にして転移・再発された方にも、症状や再発部位(肝・肺・骨など)に合わせた、なるべく副作用が少なく進行を抑えることができる薬剤を使用しています。
疼痛に関しては、当院緩和ケア科医師・がん看護専門看護師と密に連携をとり、疼痛対策を行います。
当院内には、がん看護専門看護師や心理カウンセラー(公認心理師)による緩和ケアチームがあり、担当医からの依頼により随時対応可能です。
終末期の方だけが対象ではなく、再発したとき、あるいは乳がんと診断されたときから、心のサポートを行います。 患者さんだけでなくご家族も含めて、ご相談いただけます。
乳がんの診断・治療には外科医、放射線医、病理医、薬剤師、看護師、放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、栄養士、メディカルソーシャルワーカーなど多岐に亘る職種の協力が必要となります。
当院では、乳がんの診療・治療に携わる職種が定期的にカンファレンスを行い、患者さん一人一人の乳がんの性質を詳細に検討し、患者さんに応じた治療を決定しています。
当院では、乳癌学会認定医2名が診療にあたっております。
受診当日に、マンモグラフィ検査または乳腺超音波検査を施行し、その結果は当日に説明します。良性・悪性の鑑別のため精密検査が必要な場合は、細胞診や針生検も当日に行うことが可能です。
乳がんと診断された場合、乳房再建を含めた手術療法・薬物療法・リハビリテーション・心のサポートなどを当院で受けていただくことが可能です。
放射線治療は平成26年度再開しました。乳がんが心配な方や、乳房に関してお悩みの方は、症状の有無に関わらずお気軽に当院を受診してみて下さい。
当院では、腫瘤や乳汁分泌の精査、乳がん検診後の精密検査、乳がんと診断された方の治療(手術・放射線治療・薬物療法)、転移再発の治療、乳腺炎などあらゆる状況の患者紹介を受け入れております(男性も含めて)。何なりとお気軽にご相談下さいませ。
現在は個々の外科医によるいわゆる「自己流治療」は通用しない時代です。消化器内科、放射線科など関係各科による徹底的なディスカッションを重ね、学会の定めたガイドライン(診療指針)およびエビデンス(医学的根拠)に基づいたハイレベルな診療を心がけ、クリニカルパスを活用しつつ患者さんの細かな要求にも対応できる、いわゆる「オーダーメイド治療」を実践していきたいと考えます。そのためには常に最新の医療エビデンスを臨床現場に取り入れることを心がけています。全国レベルの論文発表・学会発表を積極的に行い、臨床診療においても常に探究心を持ち、日常の診療がルチーンワークに終始しないように努力することによって最善の治療を患者さんに提供できると考えています。
具体的な研修内容については、ご遠慮なくメールでお問い合わせください。
外科 光吉: akiram7700@yahoo.co.jp
役職 | 診療部長 (副院長、医療の質・安全管理室長、患者相談支援室担当部長兼務) |
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学会認定医等資格 | 日本肝胆膵外科学会高度技能指導医・評議員、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本外科学会認定医・専門医・指導医、日本消化器外科学会認定医・専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医、日本外科感染症学会周術期感染管理認定医・周術期感染管理教育医・評議員、日本臨床栄養代謝学会認定医・評議員、ICD(インフェクション・コントロール・ドクター)認定、医療安全管理者、京都大学大学院修了・医学博士、京都大学医学部臨床教授 |
役職 | 診療部長(乳腺部門) (外来通院手術部診療部長、臨床研修センター次長兼務) |
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学会認定医等資格 | 日本乳癌学会認定医、日本外科学会専門医、四段階注射法(ジオン注)修得医 |
役職 | 医長 (感染症科診療部長、感染管理室長兼務) |
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学会認定医等資格 | 日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、日本移植学会移植認定医、ICD(インフェクション・コントロール・ドクター)認定、日本版DMAT隊員、京都大学大学院修了・医学博士 |
役職 | 医長 |
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学会認定医等資格 | 日本外科学会専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医、日本内視鏡外科学会技術認定取得医、日本ロボット外科学会専門医(Robo-Doc certificate Japanese class B)、ICD(インフェクション・コントロール・ドクター)認定、日本再生医療学会再生医療認定医、近畿外科学会評議員、手術支援ロボット術者資格医、四段階注射法(ジオン注)修得医、京都大学大学院修了・医学博士 |
役職 | 医長 |
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学会認定医等資格 | 日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医・指導医、日本消化器がん外科治療認定医、日本臨床肛門病学会認定医、四段階注射法(ジオン注)修得医、京都大学大学院修了・医学博士 |
役職 | 医員 |
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学会認定医等資格 | 日本外科学会専門医、四段階注射法(ジオン注)修得医 |
役職 | 医員 |
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学会認定医等資格 | 日本外科学会専門医 |
役職 | 医員 |
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学会認定医等資格 |
役職 | 専攻医 |
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学会認定医等資格 |
役職 | 非常勤医師 |
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学会認定医等資格 |
日本外科学会専門医制度修練施設・指定施設
日本消化器外科学会専門医制度指定修練施設・認定施設
診療受付時間 8:30~11:30(診療時間 8:45~17:15)
診察場所 | 診察時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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1診 | B2-1 | 午前 |
大江 |
光吉 | 平井 | 戸田孝 (肛門外来) |
青山 |
午後 |
大江 |
光吉 | 平井 | 戸田孝 (肛門外来) |
青山 | ||
3診 | B2-4 | 午前 | 藤田 | 岡部 (女性外科外来) |
植村 | ||
午後 | 藤田 | 岡部 (女性外科外来) |
植村 |
診察場所 | 診察時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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2診 | B2-2 | 午前 | 橘 | 橘 | 森田 | 交代制 | 橘 |
午後 | 橘 | 交代制 | 橘 | 交代制 | 橘 |
急な発病や、症状の急な変化に対しては随時対応しておりますので、受付でお申し出ください。