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消化器外科 主な疾患(肝がん)

肝癌

肝癌と特徴・働き 肝癌には、「原発性」と「転移性」の二つに分類されます。原発性とはもともと肝臓にある細胞から発生したもので、転移性は大腸がんや胃がんをはじめとする他臓器のがんが肝臓に転移して発生したものです。原発性の肝臓がんには、肝細胞から発生する「肝細胞癌」と、胆管から発生する「胆管細胞癌」の二種類があり、その95%が肝細胞癌で、肝内胆管癌が3-4%を占めます。
肝細胞癌の治療法

肝細胞癌の治療法として、主に1)肝切除術、2)経皮的局所療法(RFA, PEITなど)、3)肝動脈化学塞栓術(TACE)、4)肝移植術、5)全身化学療法があります。

当科では主に肝切除術を担当します。一般的に、癌そのものに対する治療効果としては肝切除が他の治療法よりも優れていると考えられますが、治療後の肝機能に与えるダメージは肝切除の方が大きくなります。特に肝細胞癌の患者さんでは、肝臓自体がウィルス性肝炎・肝硬変、あるいは脂肪肝によって障害を受けている場合が多いので、治療に際して癌の性質(数や大きさ)だけでなく残る肝臓による機能温存も考慮する必要があります。当科では肝癌診療ガイドラインに従い、治療効果と安全性の両者に配慮した最善の治療法を提供するように努めております。

近年、腹腔鏡下肝切除術は保険収載に伴って急速に広まりつつあり、適応や術式も拡大傾向にあります。腹腔鏡肝切除術における長所としては、次の点などが挙げられます。
1. 術後疼痛が少ない
2. 早期に離床が図れる
3. 美容面で優れる
4. 術中出血量が軽減する
5. 術後合併症が少ない
6. 術後在院日数が短い

当科では肝切除の術前に3D画像解析システムにより、腫瘍の存在部位、脈管のバリエーションや腫瘍との位置関係、切除肝および残肝容量の正確な評価を行います。術中にはインドシアニングリーン(ICG) 蛍光法を用いて術中胆道造影や肝癌の手術時診断を行い、さらに肝区域染色や胆汁鬱滞領域の描出へ応用しています。また2007年1月から薬価収載されたソナゾイドを用いた術中超音波検査をルーチンで行っています。ソナゾイドは造影効果が強く、検出力が高いため、術中における更なる腫瘍精査を行うことで、術後成績の改善に努めています。

当院では切除困難な肝臓癌、胆管癌、膵臓癌などの肝胆膵領域疾患に対して、十分な手術器材、麻酔科とICUによる充実した管理体制を備え、関係各科と協力のうえ積極的な切除を行っています。当科では年間肝切除術が20例以上経験しており、2024年より腹腔鏡下肝切除の施設基準が亜区域切除、1区域切除(外側区域切除を除く。)、2区域切除及び 3区域切除以上のもの)へ拡大されました。適切な術式選択を心がけ、安全な治療に努めています。