腎臓には糸球体という細かい血管が塊状となった構造が多数存在し、この細かい血管を流れる血液中からゴミ(老廃物)や水分を濾しだして尿を作成し、体外に排泄させることが主な役割です。大雑把に言うと、この尿を作成する機能が腎機能です。
腎機能は糸球体の数に依存し、機能する糸球体の数が減るとその分、腎機能が低下します。糸球体の数は生まれた時が最も多く、以後は加齢に伴って減少していきますが、通常は人生を全うするまで生存に問題ない程度の数が維持されます。しかし、糖尿病や高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症、糸球体腎炎や遺伝性腎疾患等により、糸球体の減少速度が速くなると、腎機能が低下して透析や腎移植が必要になります。
透析の前段階である慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease : CKD)は「尿蛋白を中心とする腎障害の存在があきらか」か、あるいは腎機能の指標である「GFRが60 mL/min/1.73m2未満」のいずれかまたは両方が3か月以上持続する状態です(表1)。全国で1330万人存在すると推計されており、成人の約8人にひとりがCKDと言われています。
CKDはeGFR値でステージ分類されており、eGFRが低下するほどCKDステージが進行し透析や腎移植が近づきます(図1)。
腎機能をつかさどる糸球体は一度失うと回復することはありません。また、腎機能はいったん低下し始めると直線的に低下し続ける性質があるため、腎機能の低下を早期に発見して治療することが重要です。しかし、腎機能が低下してCKDステージが進行しても、透析間際になるまでほとんど症状が出ないことが多いため、定期的な検査(血液検査、尿検査)で確認する必要があります。
腎機能の指標であるeGFR値は、食事内容や運動量、季節等によって日々変動しています。したがって、本当に腎機能が安定しているか、低下しているのかを確認するためには、長期間(可能であれば5年間以上)のeGFR値の推移を確認する必要があります。市立大津市民病院では長期間のeGFR推移を一括表示する「Long term eGFR plot (LTEP:エルテップ)」を活用し、腎機能低下を早期に発見し、栄養指導や薬剤調整、CKD教育入院等の治療介入を積極的に行い、腎機能の低下の抑制に努めています(図2)。
表1. CKD診断基準:健康に影響を与える腎臓の構造や機能の異常(以下のいずれか)が3か月を超えて持続
(エビデンスに基づくCKDガイドライン2023から転載)
図1. eGFR値とCKDステージ
図2. Long term eGFR plot (LTEP) を活用したCKD治療