診療科・部門一覧

脳神経外科 主な疾患(水頭症)

水頭症について

認知症が手術で治る?
高齢化に伴って、認知症の患者さんが増加しています。わが国では、2025年には675万〜730万人、実に高齢者の5人に1人が認知症になるとされています。

3大認知症と言われるのが、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」です。 アルツハイマー型認知症が最も多く、認知症全体のおよそ7割を占めます。進行抑制のための薬剤開発が進められていますが、残念ながら症状を回復させる治療法はありません。
 ただし、認知症の中には、手術によって改善する脳の病気もあります。慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、正常圧水頭症はその代表で、CTやMRI検査は有力な診断根拠になります。

慢性硬膜下血腫 軽い頭部外傷が引き金となって、数か月の経過で脳表に古い血液が貯まってくる疾患です。
貯まった血液によって脳が圧迫され、物忘れが目立つ、言葉が出にくい、元気がない、
動作が緩慢になる、半身が動かしにくい、歩きにくい、 などの症状が出てきます。
CTやMRIで簡単に診断がつき、多くの場合、貯まった血液を手術で取り除くことで
症状は速やかに改善します。
脳腫瘍 頻度は低いのですが、脳腫瘍が認知症を引き起こすことがあります。
およそ150種類の脳腫瘍があり、腫瘍の性質に応じて、手術、放射線治療、
化学療法を組み合わせて治療します。
正常圧水頭症 頭の中では毎日500mlの脳脊髄液が作られて吸収されるといわれています。
脳脊髄液が頭蓋内に過剰に溜まってしまった状態が水頭症です。
高齢者に多い原因不明の水頭症を特発性正常圧水頭症(iNPH)と呼びます。
NPHは認知症の5~10%を 占めるという報告もあり、稀ではありません。
正常圧水頭症の主な症状は歩行障害、認知症、尿失禁です。手術で
たまっている脳脊髄液を頭蓋外へ出すことで改善が期待できます。

ただし、術前には診断が正しいかよく調べてもらう必要があります。術後に症状が改善しない場合は他の原因が隠れている可能性があります。
診断に有用な情報は、症状が上記の水頭症に合致していること、脳脊髄液排除試験による症状改善の有無、CT/MRIで脳室拡大があること(脳委縮とは異なるものであること)、また、脳槽シンチ検査で脳脊髄液の流れが悪いことなどです。

水頭症とは?
手術で良くなる認知症には特発性正常圧水頭症というものもあります。脳を保護する役割を担う“脳脊髄液”という99%水を成分とする清明な液体が、必要以上に増加して、脳に負担をかけてしまう病気を水頭症といいます。脳脊髄液は“脳室”という部屋で毎日500ml程作られ、脳室から脳表に循環した後吸収されます。このように脳脊髄液は一日3回ほど完全に入れ替わるといわれています。この髄液の循環がスムーズではなくなったり、出口が目詰まりを起こしたように髄液の吸収がうまくいかなくなると、脳脊髄液の量のバランスが過剰となり脳室が大きくなって脳に負担がかかるようになります。水頭症は脳卒中など様々な脳の病気が原因となって二次的にも認められますが、原因が特定できないタイプを特発性正常圧水頭症といい、高齢者に多く発症します。 

症状について
特発性正常圧水頭症の主な症状の一つが認知症です。自発性が乏しくなり、動作の緩慢さが目立つようになります。趣味をしなくなり、物事への興味が薄れ、集中力が続かず、物忘れも顕著になります。認知症のほかにも、歩行障害、尿失禁を加えた3つの症状が主であり、三徴候と言われます。これら三徴候のうち歩行障害は最初にみられる症状(初発症状)であることが多く、特徴として小刻みな歩行となり、方向転換の際にバランスを崩しやすくなります。尿失禁は頻尿(特に夜間頻尿)や尿意の切迫感を伴うことが多く、“トイレに間に合わない”状態となります。 あてはまる症状があれば一度当院へお越し下さい。

診断
診断には詳細な問診を行い上記症状と経過を確認したうえで、頭部MRIやCTで脳室が大きくなっていないかなど画像評価をします。さらに、脳槽シンチ検査や髄液タップテスト(髄液排除試験)という検査をおこないます。これは細い注射針で腰の背骨の奥から脳脊髄液を実際に採取・除去してみて、認知症や歩行障害に改善がみられるか確認する検査です。

治療
治療法はシャント術という手術で、頭蓋内に過剰に貯まった髄液をおなか(腹腔内)に流すための経路を作ります。最も一般的なシャント術は脳室-腹腔シャント術で、脳室内の髄液をおなかに流す方法です。頭蓋骨に小さな穴をあけて脳を直接穿刺し、脳室から腹腔内まで細い管(カテーテル)を通します。また腰の背骨の奥にある脳脊髄液を,腹腔内へ流す方法(腰椎-腹腔シャント術)もあります。

正常圧水頭症の定義、ガイドライン

まずは相談してみましょう
重要なのは本人や周囲の方が「症状の変化に気づく」こと。iNPHはすぐさま患者さんの生命に関わる病気ではありません。しかし、転倒による骨折で「寝たきり」になってしまったり、認知症や尿失禁など、患者さん本人の辛さだけでなく、サポートする周囲の方の負担をさらに増大させてしまう可能性があります。
iNPHは、早期の発見・適切なタイミングで治療を行った方が、手術を遅らせた場合よりも症状の改善度合いが高いことが、臨床試験の結果で報告されています。できるだけ早く見つけ出し、正しい治療を行うことが重要です。思いあたる症状があれば、脳神経外科・脳神経内科の受診をおすすめします。
iNPHは「治療で改善できる認知症」として知られており、iNPHが疑われる患者さんは現在約37万人以上いることが分かっています。これはパーキンソン病の約2倍にあたる数です。
アルツハイマー型認知症からすると少ない割合ですが、決して無視できる患者数ではありません。ただし残念なことに、iNPHという病気は今まであまり注目されておらず、その特徴が加齢にともなう症状に似ているため、歳のせいだからと見逃され、診断・治療されないままになっていることが多いのが現状です。
しかし、iNPHの3徴候と呼ばれる主な症状「歩行障害・認知症・尿失禁」は、治療によって改善を得られるケースが多く、患者さんおよびご家族のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の向上を可能とします。そのため、iNPHの治療は、わが国のように高齢化が急速に進む社会においては、本人の自立を高め、介護の軽減をはかるのに役立つと考えられています。

「治る認知症」ともいわれる
脳が圧迫されると、認知症のような症状を発症します。ただし、正常圧水頭症を治療して脳が圧迫されなくなれば、そのような症状も改善されていきます。さらに、高齢者に多く見られる病気であることから「治る認知症」ともいわれているのです正常圧水頭症は、脳脊髄液がうまく吸収されず溜まっていくことで発症します。しかし、なぜ液が溜まってしまうのでしょうか。ここでは詳しい原因と予防するためのポイントを解説していきます。

 正常圧水頭症の原因
正常圧水頭症には、他の病気によって引き起こされる続発性正常圧水頭症と、原因が分かりにくい特発性正常圧水頭症の2種類があります。
続発性正常圧水頭症は、くも膜下出血や髄膜炎、頭部外傷などが原因で発症します。
一方、特発性の場合は原因を特定することは難しいといわれています。ただし、多くの患者が高齢者という点から、加齢による影響が少なからずあるのではないかと考えられるでしょう。さらに、身内で複数の特発性正常圧水頭症が見られるケースもあることから、遺伝が関係しているのではないかともいわれています。
現在はこのほかにも、過去に頭部をぶつけた影響が出ているなど、さまざまな仮説が登場しています。どれが原因になっているのか研究が進められている最中です。